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薬剤師の仕事・キャリア
2025.11.14
薬剤師が在宅医療で活躍するには何が必要?仕事内容と歓迎されるスキルをレポート
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超高齢社会の日本では在宅医療のニーズは高いものの、実現できない環境が続いています。内閣府の「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査」によると、最期を迎えたい場所として「自宅」を希望するが54.6%で最も高く、「病院などの医療施設」が27.7%、「特別養護老人ホームなどの福祉施設」は4.5%でした。
厚生労働省の「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書」によると、「自宅」を希望するのは43.8%、「医療機関」が41.6%、「介護施設」が10.0%でした。
いずれの調査でも「自宅」を希望する人が最も多いにも関わらず、令和3年における死亡場所は、医療機関が67%、自宅が17%、介護施設・老人ホームが14%となっています。多くの人が自分の望む場所で最期を過ごせないのです。
在宅医療推進のためには、医師、看護師だけでなく薬剤師の力も欠かせません。今回は、在宅医療における薬剤師の仕事内容や必要なスキルを紹介します。
目次
在宅医療における薬剤師の仕事内容
調剤薬局で働く薬剤師は、患者様が薬局に持ち込んだ処方箋の内容に応じた薬剤を調剤し、患者様に服薬説明を行います。かかりつけ薬剤師になれば長期的にひとりの患者様と向き合えますが、大規模で多くの患者様がいらっしゃる薬局では、関わるのは一度きりということも多いでしょう。
一方、在宅医療の薬剤師は患者様に長く、深く寄り添うことができます。細やかなケアを行いたいと考える薬剤師にはやりがいのある仕事です。
具体的な仕事の流れを見てみましょう。まず、患者様を訪問診療した医師が作成した処方箋の写しが調剤薬局に届きます。その後、処方箋の内容に応じて薬剤を調剤し、患者様の自宅や施設に向かいます。自宅や施設で処方箋の原本と引き換えに準備した薬剤を渡しながら服薬説明をします。
その際に、患者様の体調や服薬状況の確認、残薬のチェックを行います。訪問後は、医師や看護師、ケアマネジャーなど、患者様に関わる職種の人達に服薬状況や指導内容を報告します。
介護保険・医療保険ともに基本は月4回まで、患者様の自宅や施設への訪問が可能です。なお、がん末期患者様もしくは中心静脈栄養法を受けている患者様は週に2回、月8回まで訪問できます。ここから、さらに詳しく仕事内容を見てみましょう。
・患者様の自宅に薬を届ける
ADL(日常生活動作)が低下すると、本人が薬局へ処方箋を持参するのが難しくなります。介護をする方も高齢の、いわゆる老々介護の状態でも負担が大きいでしょう。家族が薬局に処方箋を持参できる場合でも、輸液や経腸栄養剤などの重い薬は運搬が負担になるほか、冷所保管が必要な薬剤など、運搬に気を遣うものもあります。薬剤師が薬を自宅まで運ぶことで、患者様や家族の負担を軽減できます。
・服薬指導
薬を渡す際は、調剤薬局と同様、薬の内容、飲み方・使い方、副作用などを丁寧に説明します。服薬指導をしながら、患者様の体調確認も行います。認知症等でご本人の理解が難しい場合は、ご家族や介護をする人にも服薬指導をするほか、体調についての情報収集も行います。
デリケートな内容であっても、自宅であれば時間に余裕を持って服薬指導ができるうえに、他の患者様の目を気にする必要がないためリラックスして聞いてもらえるのが在宅医療のメリットです。
・服薬状況の確認
処方箋通りに服薬できているかを確認します。病気の進行や合併症によって薬の種類や数が増えると服薬管理がより複雑になり、飲み忘れ、飲み残しの可能性が高まります。また、嚥下力やADLの低下により今までと同じ薬では服薬できなくなることもあります。
残薬がある場合、薬剤師は原因を把握した後、患者様と一緒に管理方法を検討して必要な指導を行います。服薬がうまくいかない理由は人によってさまざまなので、高いコミュニケーション力のほか、医療に関する知識も必要です。
・副作用のモニタリング
薬は時に体に悪影響を与えることがあります。訪問時には患者様からお話を聞くだけでなく、血圧、脈拍、症状などを通じて、副作用が起きていないかを丁寧にチェックします。副作用など、患者様の体調に変化があった場合は、医師に報告します。
・医師やケアマネジャーへの報告
在宅医療は多職種が専門分野を活かしながら、患者様の地域での生活を支えるチーム医療です。薬剤師は薬学に関する専門家として参加します。そのため、在宅訪問で得た患者様の状況、他の薬局の処方内容などを医師やケアマネジャーなどと共有します。医師に残薬の調整や処方の見直しを依頼するケースもあります。
・患者様やご家族とのコミュニケーション
訪問薬剤師は患者様の自宅に一定時間滞在するため、患者様と深いコミュニケーションがとれます。自宅や施設では周囲の目が気にならないこともあり、雑談や健康に関する相談など、薬以外の相談を受けることもあるでしょう。
そうはいっても、限られた訪問時間で全ての生活状況を把握したり、健康相談にのったりするのは難しいのが現状です。患者様の症状によってはご本人が説明するのが難しい場合もあります。そのため、患者様本人だけでなく、ご家族や介護するうえでのキーパーソン、訪問介護員などと情報を共有し、日常の様子を理解します。
薬剤師にとっての在宅医療のメリット
ますます拡大する見込みの在宅医療ですが、薬剤師にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
・将来性がある
訪問診療の受療率は年齢とともに増加する傾向にあり、超高齢社会の日本において在宅医療は縮小することはないでしょう。国も在宅医療制度を推進しており、2024年度の調剤報酬改定では、質の高い在宅医療を推進する方針が打ち出されました。在宅医療における薬剤師の専門的な役割への評価がされた形です。
これらを受け、在宅医療を拡大していきたいと考える薬局が増えており、在宅医療の経験がある薬剤師を求める企業は増加傾向です。
在宅薬剤師には在宅業務手当や、24時間対応・緊急時対応などへの手当がつくことが多く、年収アップが期待できます。在宅医療の経験を積んでおけば、将来的なキャリア形成や転職時に有利に働く可能性が高いといえるでしょう。
・やりがいがある
在宅薬剤師は患者様の自宅や施設に訪問して、服薬状況や副作用の確認だけでなく、生活リズムや食事内容といった生活状況の確認、ご家族の様子なども確認します。ときには、患者様から悩みを打ち明けられることもあるようです。また、患者様や家族との距離が近いため、直接感謝の言葉をもらえる機会も多くなります。患者様の人生に深く寄り添うことで大きなやりがいを得られるでしょう。
また、医師、看護師、ケアマネジャー、介護士などの他職種と連携して患者様の生活を支えること、用法・用量の調節や処方変更などの提案、生活状況の改善提案など、薬剤師としての専門性を発揮することでもやりがいを得られるでしょう。
在宅薬剤師が大変だと感じる仕事
大きなやりがいが得られる在宅医療ですが、大変な面もあります。
・書類作成が多い
チーム医療となる在宅医療では、薬学的管理指導計画書、医師・ケアマネジャーへの報告書、多職種カンファレンスの議事録など、書類作成の機会が多くなります。書類作成に時間を取られて残業になってしまったり、訪問件数を増やせないもどかしさを感じたりする場面があるでしょう。AIを上手に活用するなど、業務の効率化が必要です。
・コミュニケーションの難易度が高い
患者様やご家族と深いコミュニケーションがとれることは魅力でもありますが、難易度が高いと感じる場面もあります。たとえば、認知機能が低下した患者様や終末期の患者様とのコミュニケーションや、ご家族間での意見の相違がある場合の調整などは、対応の難易度が上がります。
医師への処方提案、看護師やケアマネジャーとの情報共有なども、慣れるまではコミュニケーションが難しいと感じることもあるでしょう。薬剤師は薬学の専門家であるため、医療や介護の専門用語がわからないことがあります。また、薬学の専門知識を他職種の皆さんに伝えるために、かみ砕いて説明する必要があるなど、双方のコミュニケーションには工夫が必要です。
いずれにしろ、先輩のサポートを受けながら経験を積めば、コミュニケーション力は自然と高まっていくでしょう。
・体力や精神力、スケジュール管理力が必要
在宅医療では患者様の自宅や施設に訪問するため、体力が必要です。移動は自動車を使うことが多いですが、エリアによっては自転車や徒歩の場合もあります。1日に5~10件程度、訪問するのが一般的であり、スケジュール管理力が欠かせません。
また、調剤は他の薬剤師が行い、在宅薬剤師は訪問だけと分業になっているケースが多いものの、訪問スケジュールと他業務との両立も必要です。ときには、患者様の急変による緊急対応が必要になったり、早朝や深夜など開局時間外の対応が求められたりと、体力と精神力が求められます。
薬剤師の在宅医療で歓迎されるスキル
薬剤師以外の資格が必要になるわけではありませんが、在宅医療に関わる薬剤師として歓迎される資格やスキルを紹介します。
・認定薬剤師の資格
在宅医療の現場で役立つ薬剤師向けの資格として「在宅療養支援認定薬剤師」があります。在宅での薬物療法支援に必須の資格ではありませんが、取得すれば在宅療養に必要なスキルを身につけた証明になります。
・専門的な知識と柔軟に対応できるスキル
在宅訪問での服薬指導では、今まで学んできた薬の知識だけでは対応しきれない場面が多くあります。たとえば、「認知機能の低下によって服薬管理がうまくできない」「患者様やご家族が薬の必要性を理解していない」「身体的な理由で服薬が困難」など、さまざまな場面に遭遇します。
薬剤師は患者様の体調や生活環境、認知機能などを把握し、患者様の応じた服薬指導を行う力が必要です。病院や薬局では複数の薬剤師が連携できますが、在宅医療は基本的に一人で訪問するため、現場での判断力や柔軟な対応力が求められます。
・コミュニケーション力
服薬指導や副作用のモニタリングには、患者様の体調や日常生活の様子を把握するためのコミュニケーションが欠かせません。また、患者様の年齢や認知機能に合わせた話し方、伝え方を工夫する必要があります。患者様本人だけでなく、ご家族などのキーパーソンと話す機会もあるため、高いコミュニケーションスキルがある人に向いているといえます。
在宅医療を行っている職場選びのポイント
在宅医療の経験を積みたいと思ったら、在宅医療を行っている薬局への転職を検討しましょう。働きやすい職場に出会うためのポイントを紹介します。
・在宅専門薬局を選ぶ
在宅医療を行っている薬局には、在宅医療を専門に行っている薬局と、外来業務をしながら在宅業務を行っている薬局があります。在宅医療の経験を積極的に積みたいなら、在宅専門薬局がおすすめです。入社してみたら外来の調剤薬局部門に回された、人手不足が原因で調剤薬局部門に異動になったということがありません。
在宅専門薬局は、薬剤師が在宅医療業務に集中できる環境が整っています。在宅医療業務を効率化するシステムやツールが充実しているケースもあり、患者様のケアに十分時間を割くことができるでしょう。在宅医療に取り組む同僚が多いため、経験の共有や相談もしやすいところも魅力です。
・在宅医療の研修制度がある薬局を選ぶ
研修制度が充実している薬局が増えていますが、その中でも在宅医療に必要な知識や技能を学ぶ機会が多い薬局を選ぶとよいでしょう。在宅医療に必要な多職種連携のためのコミュニケーション研修、在宅での薬学的管理に関する講座などが用意されていることがあります。
・十分なサポート体制がある薬局を選ぶ
在宅医療に取り組んでいる薬剤師が多い職場では、気軽に先輩薬剤師に相談できるため、一人で悩まずに安心して業務に取り組めるでしょう。在宅医療では資料作成等の事務業務が増えるだけでなく、移動のスケジュール管理も必要です。
クラウド型の電子薬歴や計画書・報告書のデータ化により、訪問先や移動時間での書類の閲覧や入力を可能にして時間を効率よく使えるようにしていたり、訪問スケジュールの管理や多職種との情報共有にITツールを使用していたりする薬局を選ぶと、負担を軽減できます。
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